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環境ビジネス情報

特集コラム ~サステナビリティとキャリア~

SDGsをいかに評価するか?

横浜国立大学大学院国際社会科学研究院
氏川 恵次 教授

インタビュー 技術・科学
「環境ビジネスで働く人にきく!」今回は横浜国立大学大学院国際社会科学研究院 教授(経済学博士)、氏川 恵次 教授にお話を伺いました。

先生のご経歴についてお聞かせください。

経済学部に在籍の折から、人口問題、資源・廃棄物問題といった経済社会の制約となる問題に、経済学が有効な処方箋を提供できていないことに強い疑問を持っていました。約20年前の大学院時代から、指導教員の勧めで、世界で最も環境が汚染された中国の内陸部の実態にふれ、こうした地域での深刻な環境汚染、貧困、開発といった、今風に言えばSDGsの具体化を模索してまいりました。 現在、主に産業・産業連関分析、国民経済計算論をはじめとした各種の手法を用いて、経済・社会・環境の複数の視点からSDGsや各種指標をいかに適正に評価するか、を研究しています。

先生の横浜国立大学での担当科目・授業についてお教え下さい。

国際環境経済論(学部)、国際環境経済(博士課程前期)、環境経済研究(博士課程後期)、Environment and Economic Development(博士課程前期、英語)などを教えています。

先生は現在、どのような研究をされているのでしょうか?

「海外評価機関主導のESGから、日本の地域発信のESG評価をすること」について研究しています。
SDGsの評価を国レベルや経団連などで出すようになり、ESGも海外の機関で評価され、大枠が固まってきています。そのような中で私たちがやろうとしていることは、SNAをはじめとする複数の経済・社会・環境統計を応用して、SDGsであるとか、もう少しブレークダウンしたレベルの評価にうまく使えないかということで、民間企業等とも連携して検証を始めています。実際に投資関係の方にも入っていただいて、海外から輸入している既存のESG評価等も見直して、むしろ日本発の評価手法の提案も検討し始めています。
SDGsに則して、各企業で色々な取り組みを進めていくことになりますが、実際に企業の方々にヒヤリングをすると、例えばある種の規格が商品やサービスを提供する際の一種の制約になってしまっているという意見があります。これに対して、ある企業のバリューチェーン、あるいはもう少し広げて横浜市、神奈川県といった地域レベルで把握して、LCAの考え方で、どの過程からCO2が排出され、どこでそれを削減したらよいのかを地域社会・消費者・企業等に提示することができないか、という研究も進めています。
SDGsは国や企業にとって大きなチャンスになると思いますが、それと同時に大きな制約にもなります。そうならないよう、できるだけうまく活用して、地域社会や企業のガバナンスができるよう、我々の分析手法が使えないか、というのが大きな目標の一つとなっています。

研究の対象地域はどこになるのでしょうか?

地域については横浜市等の大都市だけでなく、例えば小田原市・箱根町といった県西部のように、自然豊かな地域でも検討しています。横浜市の場合ですと、いわゆるエコプロダクツがとくに対象となりますが、上記の県西部等については、他にもエコツーリズム等で見ていきたいなと思っています。

氏川 恵次(うじかわ けいじ)
  • 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院・教授

  • 1973年仙台市出身
  • 東北大学大学院経済学研究科博士課程後期修了(経済学博士)
  • 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院・教授に就任
  • 同分野に関する論文・著書多数。